So-net無料ブログ作成

お笑い芸人の“生活保護”事例は、民法の親族扶養が現代社会に適さなくなったことを知らしめてくれた [社会]


今年5月、人気お笑い芸人の母親が生活保護を受給していたことが報道で大きく取り上げられ、これを契機に生活保護制度の課題を洗い出し、制度を見直す動きがみられた。このお笑い芸人の事例では、母親が生活保護を受給するための要件を満たしていたので、何ら「不正受給」ではない(生活保護法4条1項参照)。しかし、多額の収入を得ている人気芸人の息子が、母親に十分な生活費を仕送りするなどせず、結果として母親が生活保護を受けざるを得なかったことが疑問視され、バッシングまでも起こった。

法律的にみれば、これは生活保護法77条の問題である。このお笑い芸人の事例に即して同条を説明すれば、「息子は母親を扶養する(生活費を援助する)義務があり(民法877条1項)、息子が裕福であるなら、母親に生活費を仕送りするなど援助しなければならない。それなのに、息子が適切な援助をしていなかったら、息子は民法の扶養義務を果たしていないことになる。その場合、母親に生活保護を支給した自治体は、支給した生活保護費の全部または一部を息子から徴収することできる」というものだ。そして、息子が負担すべき母親の生活費(仕送り額)は、息子と自治体との協議で決定されることになっている(生活保護法77条2項参照)。報道によれば、このお笑い芸人は、高収入を得るようになったのちに福祉事務所と協議を行って仕送り額を決め、その協議にしたがって母親に仕送りをしていたという。そうであれば、生活保護法77条の観点からも特に問題になる事例ではない

結局、このお笑い芸人の事例では、生活保護法に違反する点はなく、(道義上の問題は別として)法律上は何が問題なのか、よくわからない。法律上の問題点があるとすれば、息子に母親の扶養義務を負わせている民法の規定(立法政策)であろう。民法877条1項は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めているが、民法の認める親族扶養の範囲は先進諸国では類例をみないほど広範であり、特に現実に共同して生活していない親族にまで扶養義務を課しているのはあまりに扶養範囲を広げすぎではないか、と批判されている。例えば、フランスやイギリスなどの欧州諸国では、夫婦間の扶養義務と親の未成年の子に対する扶養義務を認めるのみで、子の親に対する扶養義務や兄弟姉妹間での扶養義務は課せられていない国が多い。

あの過熱気味だった報道もいまは一段落している。時間を置いて冷静に考えてみたとき、お笑い芸人の事例は、民法の定める親族扶養がもはや現代社会に適合しなくなったことをわれわれに知らしめてくれたのだと思う。核家族化が進行し、単身世帯が急増。「無縁社会」とまでいわれる現代社会において、民法の広範な親族扶養が根拠とする「親族共同生活体」という意識がますます薄れている。いまや、扶養義務の履行を強制することが正当化できるのか、疑問が残る

IMG_1653.JPG
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0