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原発事故から1年。被災者が時効により損害賠償請求権を失うおそれに注意してほしい [原子力災害]


明日で東日本大震災から1年。東京都の国立劇場で追悼式典が開催され、心臓冠動脈のバイパス手術を受けた天皇陛下も出席される。午後2時46分から1分間の黙祷が捧げられる。私も仕事の手を休め、亡くなった方々の無念の思いとご遺族の悲しみに思いをいたして心から黙祷を捧げたい。

東日本大震災で発生したがれきは、環境省の推計でおよそ2,200万トン。大震災発生から1年となる現在でも、処理されたがれきの量は全体の約6.2%にとどまっている。政府は全国での広域的ながれき処理を呼びかけるが、放射能汚染が心配されるため、がれきを受け入れる自治体が少ない。自治体の首長が受入れを表明しても、地元住民が強く反対し、事実上がれきを受け入れることができない。政府は放射線量の測定を行い、安全が確認されていると何度も説明するが、住民は疑心暗鬼となっている。原発事故の発生以来、国民は政府が示す数値や情報を信頼することができなくなった。このような状況では、政府がトップダウンでがれき処理を呼び掛けても進捗しない。むしろ、被災自治体が、がれきを受け入れてくれる自治体や住民と直接話し合いをし、相互の理解を深めていくほかないであろう。政府は、その話し合いの場をセッティングし、重ねて放射線量のモニタリング、風評被害に対する補償など後方から継続的な支援をしていくべきである。

もう一つ、気になるデータがある。原発事故の損害賠償を請求する書類を東京電力にまだ提出していない人が全体の57%もいる。そのうち半数が「請求書の内容が理解しにくく記入できない」、3分の1が「賠償金額・基準に納得がいかない」ことを理由に挙げている。損害賠償請求には「時効」と呼ばれる制度があり、損害発生から3年間、東京電力に請求しないと賠償請求ができなくなる(民法724条)。請求書の内容がわかりにくいなどの理由があったとしても、請求しない限り、3年間という時効期間は日々進行していく。しかも、この時効の進行を止めるためには、原則として訴訟を提起しなければならない。請求書を東京電力に提出しただけでは時効の進行を完全に止めることができない(民法153条参照)。現在のところ、請求書を提出した被災者と東京電力が合意(和解)できるに至ったケースはまだ少なく、合意に至るには長い期間をかけて交渉せねばならない。そうすると、原発事故から1年が経過した今、そろそろ請求書を提出して東京電力と交渉を始めなければ、3年間の時効期間が満了する前に合意に達することが困難になり、訴訟の提起を強いられてしまう。被災者が時効により損害賠償請求権を失うことがないよう注意を払う必要が出てきた。原発事故の賠償請求手続をサポートする政府の原子力損害賠償支援機構は、この点を考慮して迅速に対応を取らねばならない。

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